日本の確率論研究を牽引してきた著者によるブラウン運動の誕生譚、そしてその現在を語った本です。微細な塵が顕微鏡下で不規則で非常に細かい動きをしていることを観察したことは誰でもあると思います。そのような観察から生まれたと言われるブラウン運動は古代ローマ時代まで遡ることができることを御存じでしょうか。本書からは、これが単なる自然現象の観察とそのモデル化ではなく、営々と続く人類の知的営みによってブラウン運動という数学的概念が生み出され、確立されたことを知ることができます。
本書のように確率論研究者による歴史に言及した類書は見当たらず、ブラウン運動というものに興味のある研究者や学生にお勧めします。
コラム掲載号:
理工学メディアセンターニュース260号(2025年1月)