フェイクニュースという言葉をよく耳にしますが、美術館や博物館に飾られている絵画作品や展示品は本物であると皆思っています。この本を読むと、本物と偽物の境目は、そのようなものでも単純ではないことがわかります。また、偽物=悪とは限らないこと、本物と偽物はつねに線引きできるわけではなく本物か偽物かの基準は時代によって変わること、さらにその線引きや解釈にはグレーゾーンが存在することが強調されています。著者は、科学と物質文化の歴史を研究する著述家で、芸術作品、宝石、香料、遺跡など8つのエピソードを紹介しています。
この本は、ホンモノの偽物が身の回りにも沢山あるような気にさせてくれる楽しく読める一冊です。
コラム掲載号:
理工学メディアセンターニュース228号(2021年3月)