一度、日吉図書館を隅から隅まで――できれば開館直後や閉館間際の、人の少ない時間帯に――ゆっくり歩いてみてください。書棚に隙間なく並ぶ無数の本の背表紙を目で追ううちに、これらの本に記録された人類の知的営為の膨大さと広大さに圧倒されるでしょう。と同時に、これらの本に書かれていることを知りたい、という知的好奇心が勃然と湧き起こってくるにちがいありません。
最近の学生はやたらに忙しそうです。スマホを片手にLINEだのFacebookだのTwitterだの、情報の交換や蒐集や発信にいとまがありません。しかし、学生時代ほど自由な時間が作れる時期は人生において他にないはずです。ときには思い切ってデジタル機器の電源を切り、アナログそのもののメディアである本にじっくり取り組みましょう。紙に印刷された文字を追っていく時間をどれほど多く作れるか――学生生活が実り多いものになるか否かは、じつはこの一点にかかっているといえるかもしれません。
目先の目的に左右されぬゆったりした時間を(その気になれば)過ごせる学生時代だからこそ、ぜひ長大な小説や難解な哲学書に取り組んでもらいたい。しかし、ここでは気軽に読めて、しかし繰り返し読んでも飽きることがない本、ビタミン剤がわりにカバンの片隅に常備しておきたい本を紹介します。効き目は保証付き、思うように進まぬレポートの執筆に頭が疲れ、人間関係の面倒さに心が疲れたら、気の向いたところを開いて数頁でも読んでみてください。さっきまでより生きることに対して前向きになれている自分がいるはずです。
ドイツ語学、ゲルマン語学
ドイツ語のほかに、オランダ語、ノルウェー語、デンマーク語、スウェーデン語など、ゲルマン語と呼ばれる言語と楽しく格闘中。とくに態と再帰代名詞に興味があります。
私自身のことを振り返ってみても、大学に入学して、受験勉強をしていた時期にできなかったことに時間を費やすことができると、なんとも嬉しく意気込んでいたのを思い出します。その最初の、そして最大の事柄は、本を読むこと。受験勉強時期にも読書はしていたと思いますが、純粋に読書の楽しみのために本を読むということが重要なのです。こうした読書は、その時には直接何かの役に立つということはないかもしれませんが、その無償の喜びはいずれおおきく育って私たちの力の源になってくれるはずです。さて、読書以外にも、大学時代の新しい友だちをつくる、知的好奇心のままに自分の関心事をとことん突き詰めて追求する。こうしたことはそれぞれすぐに結果の得られるものではないでしょうが、将来、間違いなく自分をささえる力になってくれます。比較的時間の余裕のある学生時代に行ってほしいことです。
本当は推薦図書を千冊挙げるということをしてみたかった。大学四年間ならば、千は難しいかもしれないが、その半分は十分に読むことが可能な冊数だろう。とはいえ、図書館からの要請は数冊ということだった。なるべく5冊程度にまとめる努力をしてみよう。
以上挙げた本は、小説で読むものはストーリーではないのだ、ということを教えてくれるものばかりです。だから、あらすじ紹介やダイジェストなどは意味がありません。ゆっくりと楽しみながら、ぜひ読書の快楽を味わってください。
教員のオススメ本 2017
日時:2017年3月28日~5月27日 場所:日吉図書館1階新着棚前 オススメ本一覧