1)自己紹介 | |
よく喋り、よく歩き、たくさん読書する文学部の教員です!大学の教養研究センターで、発想と本を持ち寄る読書会(「アイデアの系譜学」読書会)を主催しています。アメリカ・イギリスで8年弱の研究生活を送り、海を渡って日吉にやってきました。授業教室では文字通り、飛んだり跳ねたりしながら、英語を教えています。「関係の見える化」に熱意を注ぎ、よく黒板に表や図を描きます。組織図や路線図、登場人物の関係図など、ダイアグラムを眺めるのが好きです。 |
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2)専門・研究分野 | |
18世紀研究者です。探究のキーワードは「おしゃべりの知」、「アイデアの生態系」、「博物学的思考/百科事典的俯瞰」、「文芸共和国への跳躍」、「雑の力」、「体系と断片」、などなど。18世紀の啓蒙都市エジンバラを舞台に、哲学者や出版人、演劇家や医者、法曹家など、さまざまな人がお喋りをし、その創造的混沌の中から、新しいアイデアが生まれ、循環・変容していくプロセスを追いかけています。 | |
3)どんな学生でしたか | |
もともと数学と漢文が大好きで、生物と世界史に没頭する理系の高校生でした。概念定義と分類整理にハマっていたので、上記の四つは、根本的には同じものだと思っていたのです。受験期になって「自分の興味あるもの・ないもの」の境界線と、世間で言う文理の区分けが、まったく合致せずオロオロし始めます。 |
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4)日吉のおすすめスポットとおすすめポイント、理由を教えてください | |
やはり、日吉メディアセンターがお気に入りの場所です。1階のレファレンス・コーナーに座って、オノマトペ辞典を片手に、新たな擬音語・擬態語の開発に勤しんだりします。じっくり考えたい時は、4階の書棚をウロウロします。 | |
5)塾生に一言お願いします | |
一言:分からないは、愉快だ。 |
推薦するテーマについてコメントをいただきました。 |
テーマ:関係性のレッスン |
【レッスンその1】
図書館の散策は、読者と書物の「かくれんぼ」大会です。
本棚に隠れた意外な本を、作者が忍ばせた物語の仕掛けを、あなたの目利きで探し当ててください。
書棚には「驚き」が詰まっています。「大学図書館では絵本も読める」という意外さに、まずはビックリしてみませんか?
本棚と本棚の間をウロウロすると、思わぬタイトルに出会います。この『シェイクスピア劇場』も、そんな遭遇の産物です。「リア王」の頁をめくると、主役が左奥にポツンと描かれ悲しげな様子。死体が転がりおどろおどろしいですが、中央のテントにはシェイクスピアがカメオ出演しています。
悲しみや怒りの光景に、ちょっとした「クスッ」を入れるのが、なんとも安野さんの絵本らしい。作者の安野さんとわたしたち読者の間で、遊び心の知恵比べが始まります。
【レッスンその2】
作者や編者との「感覚的なズレ」を楽しむのも読書です。オヤっと思ったら、自分があちらの立場になって、企画やことばを考えてみましょう。
アリストテレスやモンテーニュの文章と並んで、落語談義の「空気草履」や職人の「大寅道具話」、徳川夢声が司会の「対談」などが収録されています。頭の体操が好きな人、未知の世界に飛び込んでみたい人、大人を質問攻めにした経験がある人、ふと思いついた何かを言葉にするのが好きな人などなど、「高校の倫理がちょっと好きで、哲学にも興味あるけど、専門にするのはちょっと違うな~」と思っている人の心を、ギュッとつかむアンソロジーです。
1990年の編集企画がベースとなっており、作品チョイスや言葉遣いには古さも少し感じます。おじいちゃん・おばあちゃんのコレクションを眺める感じで、「私だったらこのテーマで、こんな作品を入れるぞ」と夢想するのも楽しいです。
【レッスンその3】
教室の外で読む教科書は、ジグザグに読んでみるのもよし。そこからあなた自身の世界が、立ち上がってくるはずです。
教科書っぽい本に見えますが、オマケ部分がとっても充実しています。
図像やモノにフォーカスした「イメージの回廊」コーナーは、美術館の企画展のように楽しめます。当該巻のトピックは「蒐集された宇宙:『蒐めること』と『読むこと』」となっており、博物学者の肖像画から作家の書斎写真、解剖教室の版画から始まり、数々の「驚異の部屋」の珍品が列挙されています。年表・図表のコーナーも付いており、「ユートピアの系譜学」や「完全言語を求めて」といったダイアグラムに心が躍ります。かたちと思考について理論的に掘り下げたければ、コラムの「哲学的文化史から形象学へ」を読みましょう。
実はあなたの興味関心、気づかないところで「哲学史に片足を踏み入れていた」ことを自覚するかもしれません。
【レッスンその4】
目だけで読み、頭だけで考えるのはもったいない!指先や肌感覚など、全身を使った読書というのもあります。書を捨てずに、お出かけしましょう。
思考には「かたち」があります。その形象を読み解くためには、ことばに熟達するのみならず、外に出てあれこれ観察し、五感で世界を捉えるのも大切。闊達な読者は、本を片手に外に出ます。この造形教室で土や竹に触れ、各素材を理解し、制作へと向かう姿に注目です。知とは頭だけでなく、指先や鼻、舌や膝に宿るものなのです。翻って本もモノです。インクの香り、表紙の手触り、カヴァーの色彩など、読書や思考も五感を通じて「構造化」されていくのだと、改めて気づかされます。
【レッスンその5】
本にも骨格があり、目次からその形態が読み取れます。本の内容だけでなく、その構造を楽しむ読書も、大学ならではの経験です。
心の働きをテーマとした、不思議な構造の本です。ミンスキーは心というものが、単一の原理による働きではなく、たくさんの微少な「プロセス」の応答によって構成される、と考えています。彼はこうした集まりを「心の社会」と呼び、本書をこのモデルと対応させて、たくさんのアイデアの集合体として構成しています。
認知科学の書物なのですが、時には発想法のカタログのように、あるいはアフォリズム集のようにも読めます。フロンティアを目指す探究というのは、時として、まったく当該分野と関係ない読者にも、「つながり」や「よろこび」を感じさせます。愉快な脱領域的知を感じる、スゴイ一冊です。ミンスキーは講義も面白い人なので、実際の喋りとペンの声を重ねてみるのも、一つの読み方です。
【レッスンその6】
学問の壁を取っ払って世界を観察し、書物に遊ぶとますます楽しいですね!
小学校の算数で、円の問題に苦しんだ人もいるでしょう。あの悪夢から幾数年、かたちの思考はキャンパスのあちらこちらに(今度は楽しい形で)潜んでいます。英文学を学べば「円」卓の騎士たちが飛び出し、地理の授業では円形の地図と出会い、体育で五輪の旗を眺め、文化人類学で円舞の列と遭遇し、心理学では円の錯視を学び、歴史では中世の魔方陣を読み解くかもしれません。そもそも、アルファベットのOも「まる」ですね。
数学や計算が苦手でも、数の世界からアイデアをもらったり、かたちから思考を広げる経路がまだまだ開けています。ムナーリはお茶目で、領域横断的なイタズラが大得意。理系と呼ばれる世界から、世界の眺め方や発想の方法を「お裾分け」してもらうのはいかがでしょう?
こうして私のオススメ文章は、絵本がスタートで、絵本がゴールになりました。いわば円環構造のように「ふりだしにもどる」のです。楽しい読書は実のところ、いつまでも終わりません。みなさん、よい日吉キャンパス生活を!
1)自己紹介 | |
文学部の教員です。授業は、日吉では主に文学部一年生の中国語を、三田では中国古典文学史やゼミを担当しています。 |
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2)専門・研究分野 | |
中国の古典文学です。わかりやすくいえば「漢文」です。具体的には、中国宋代の詩論について、特に厳羽『滄浪詩話』を中心に研究しています。 当時の人々が、「詩とはどうあるべきか」についてどのように考えていたのかを、詩論に用いられる範疇語(概念語)の意味を手がかりに解明しようとしています。 |
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3)どんな学生でしたか | |
あまり人に誇れたり、面白味のある学生生活ではありませんでした。サークルもバイトも色々やりましたが、4年間続けたものは何一つありません。 |
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4)日吉のおすすめスポットとおすすめポイント、理由を教えてください | |
日吉キャンパスから少しはなれますが、矢上キャンパスの奥(元住吉側)にある、矢上川沿いの道です。 自転車通勤でよく通りますが、散歩にもお勧めです。春は桜並木がきれいですよ。 |
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5)塾生に一言お願いします | |
一度しかない貴重な四年間ですので、色々な経験をし、充実した生活を送ってください。 |
日本で最もよく知られている中国古典文学の名作です。私の小学生から中学生の頃の愛読書でした。年を取ったいま読んでも、その面白さはまったく色あせていません。
これを読んで面白いと思ったら、次はぜひ原作(羅貫中『三国志演義』。私は岩波文庫版が好きです)にチャレンジしてみてください。
中学生の頃に読みました。当時の私には、「世界には自分達とはまったく異なる価値観が存在し、それが合理性を持っている」というこの本の考え方が非常に新鮮でした。「日本人」や「日本人である私」について考えるようになり、将来海外のことを勉強しようと志す基礎を作ってくれた本です。
1987年にノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進氏へのインタビュー。この本を読んで、「将来は研究者になりたい」という思いが確固たるものになりました。大げさに言えば私の人生を変えた本です。利根川氏の言う「研究は運とセンス」ということばの深さを、この本を読んでぜひ感じ取ってもらいたいです。
かつて友人から「脱出できない無人島に一冊だけ持ってくならどの本か?」という質問をされ、私が選んだのがこれ。中国の長い歴史を通じて一二を争う名著だと思います。マンガなどで知識をつけて、「項羽本紀」「孫子呉起列伝」「伍子胥列伝」あたりの有名どころから読み始めるのが良いでしょう。
自分の専門である漢詩で、何か一冊紹介したいと考えて選びました。中学生向けに書かれているので分かりやすく、しかも最先端の研究も紹介されている名著です。「漢詩なんて」という人にも、ぜひ読んでもらいたい本です。
1)自己紹介 | |
英語と認知言語学を教えています。主に日吉キャンパスにいますが、矢上・三田でも教えています。 |
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2)専門・研究分野 | |
認知言語学です。人間の持つ言葉の知識とは?、それはChatGPTなどの生成AIの持つ知識とどう違うか?、を中心に研究しています。 | |
3)どんな学生でしたか | |
書泉グランデ、丸善、紀伊國屋書店などの洋書コーナーで英語のペーパーバックを物色し、小説を原書で読むのが好きでした。友人と本のおすすめを語り合ったりしていました。 |
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4)日吉のおすすめスポットとおすすめポイント、理由を教えてください | |
銀杏並木から陸上競技場へ降りて、協生館・横浜市営地下鉄入口前広場に出るまでの階段です。 私の通勤ルートなのですが、朝は空気が清々しく、広々とした陸上競技場を眺めながら階段を上がっていくと「今日も一日頑張ろう!」という気になります。夕方は夕焼けが美しく、一日を締めくくる癒しのひとときが過ごせます。 |
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5)塾生に一言お願いします | |
大学生活で人間的・精神的・知的に成長するために、ぜひキャンパスのリソースをフルに活用して欲しいです。メディアセンター然り、教員然りです。気楽にメディアセンターに足を運んだり、話しやすそうな教員がいたら話しかけたりしてみてください。ただし、対象(メディアセンターの場合は施設や蔵書だけでなく蔵書に詰まっている情報)や相手に対するリスペクトを忘れないよう、剽窃やマナーには気をつけてください。 |
ヒトの言葉の特徴とヒトがもつ知識や能力について、コンピュータによるヒトの言葉の処理(自然言語処理)やAIの仕組みと比較しつつ、言語学の立場からわかりやすく解説しています。ChatGPT登場前に書かれた本ですが、今現在の生成AIの能力を正しく評価するためにも一読をすすめます。
現在の大規模言語モデルや生成AIにはどのような可能性とリスクがあるかについて、情報工学研究者がバランスよく紹介しています。ChatGPT台頭後の2023年6月に出た本でかなり最近の状況まで扱っていますが、前提知識なしに読めます。
生成AIの仕組みに少しでも興味のある人に。
親や兄姉達が次々と去っていった湿地の一軒家に幼少時から一人で暮らす主人公の成長と、殺人事件が交錯する物語。自然動物学者の著者による自然描写が美しい上にストーリーが息をもつかせず、まさにpage-turner(読み出したら止まらない本)です。
邦訳が本屋大賞翻訳小説部門一位に輝いたので日本語で読んだ方もいると思いますが、英語で(も)読んで欲しいです。最近映画化もされました。
原書と邦訳、原作と映画を体験して、受ける印象の違いに思いを馳せるのは楽しいものです。
◆邦訳版:ザリガニの鳴くところ(日吉図書館の配置場所:3階西閲覧室、請求記号:B@933@Ow1@1)
◆映画版(DVD):ザリガニの鳴くところ(日吉図書館の配置場所:1階AV資料、請求記号:H@700@D5@2111)
私たちが「先進国アメリカ」として思い浮かべる光景とは全く異なる現実が垣間見られる自伝です。父親の方針で17歳まで学校とは無縁で育った著者は、兄からの暴力にも負けず学ぶことを決意。ケンブリッジ大で博士号を取得後、ハーバード大学で研究員の職を得ます。
大学で学ぶ意味がわからなくなった時に何らかの示唆を与えてくれるはず。邦訳が出る前に原書を読む醍醐味は格別ですが、この本は最近邦訳が出版されました(英語のオーディオブックもおすすめです)。
※オーディオブックは図書館では購入できません。
◆邦訳版:エデュケーション : 大学は私の人生を変えた(日吉図書館の配置場所:2階東閲覧室、請求記号:L@289.3@We1@1)
テクノロジーの進歩の速度は指数関数的に上昇しており、人間の適応力の限界を超えているそうです。テクノロジーの進歩を作為的に止められないとすると、現代を生きる私たちはどうすれば良いのか。New York Timesコラムニストの著者の答えは検討の価値があります。さらに、著者は「テクノロジー・気候・経済の3つの力がそれぞれ複雑に絡み合いながら飛躍的なスピードで変化している」ことを念頭におけば21世紀を把握しやすいと言います。この本は、自分自身の軸で冷静に世界を見つめることの重要性に気づかせてくれます。
◆邦訳版:遅刻してくれて、ありがとう : 常識が通じない時代の生き方 上(日吉図書館の配置場所:2階西閲覧室、請求記号:B@361.5@Fr4@1-1)
遅刻してくれて、ありがとう : 常識が通じない時代の生き方 下(日吉図書館の配置場所:2階西閲覧室、請求記号:B@361.5@Fr4@1-2)