いにしえの文物はつねに人を魅了してきました。
江戸時代の日本ではそれらを集め、正しく理解しようとする好古の文化・学問が大きく発展しました。
松平定信、本居宣長、上田秋成、藤貞幹、橋本経亮(つねすけ)、狩谷棭斎などその担い手たちの知的営みを、多数の初公開資料から探ります。
会 期 :2021年10月6日(水)~10月12日(火) (終了しました)
会 場 :丸善・丸の内本店4階ギャラリー(入場無料)
時 間 :9:00~21:00 最終日16:00閉場
第33回慶應義塾図書館貴重書展示会
「蒐められた古(あつめられたいにしえ)ー江戸の日本学ー」
主催:慶應義塾図書館
協賛:丸善雄松堂株式会社
協力:慶應義塾大学附属研究所斯道文庫
香果遺珍 風 箱(ポスター掲載資料)
第33回となる今年は、慶應義塾図書館の所蔵する近世期の国学者橋本経亮(つねすけ)の旧蔵資料「香果遺珍」を中心に、江戸時代の日本に華開いた好古と蒐集の文化に関する資料80点を展示します。
「香果遺珍」は2020年度末に整理が完了し、本展示会が初公開となります。
典籍・書画・文書・器物(摸写や模造を含む)など多彩な資料を通じて、経亮をはじめ松平定信・本居宣長・上田秋成・藤貞幹・屋代弘賢・狩谷棭斎・谷文晁・三熊花顛など近世期の日本人による自国のいにしえをめぐる知の営みの実像に迫ります。
10月 8日(金)18時~
10月10日(日)14時~
慶應義塾大学附属研究所斯道文庫准教授 一戸 渉
★ギャラリートークを動画でご覧いただけます(2021年10月8日 約1時間)
「蒐められた古(あつめられたいにしえ)ー江戸の日本学ー」ギャラリートーク
※図録を見ながら解説を聞くと、より一層楽しめます。
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<参考> 過去の展示会のギャラリートーク動画(展示会の概要については、左側のメニューからご覧いただけます。)
2020年度 「古代中世 日本人の読書」
2019年度 「究極の質感(マテリアリティ)-西洋中世写本の輝き-」
2018年度 「インキュナブラの時代―慶應義塾の西洋初期印刷本コレクションとその広がり」
2017年度 「古文書コレクションの源流探検-反町十郎、反町茂雄、木島誠三、木島櫻谷、そして…」
寛政12年(1800)写 摸写弘仁本
『文館詞林』は唐代に編纂された勅撰漢詩文集で、中国では宋代に失われ本邦にのみ伝わった佚存書です。このたび慶應義塾図書館の所蔵する近世の国学者橋本経亮(1759~1805)の旧蔵資料「香果遺珍」の中から発見された『文館詞林』の零巻零葉群は、弘仁14年(823)に宮中の校書殿で作成された写本に基づいて江戸後期に経亮の周辺で作成された摸写で、その中には従来知られていなかった佚文が含まれていることが判明しました。写真に掲げた零葉の右から7行分は馬融「上林頌」の末尾89字と見なすことができ、後漢時代の新出の佚文ということになります。本展示会では新出部分を中心に香果遺珍中の『文館詞林』の摸写資料を複数出陳します。
〔平安時代〕製 東寺旧蔵
橋本経亮旧蔵の香果遺珍の中より見出された、東寺(教王護国寺)に伝わり、国の重要文化財に指定されている『大般若経』600巻を包んで保護する経帙に用いられていた纐纈(絞り染め)の裂(きれ)の残欠で、平安時代のものと推定されます。経亮は寛政年間に藤貞幹らと東寺伝来の文書や典籍等の調査を行っており、そうした縁で譲り受けたのでしょう。東寺にも同趣の裂の残欠が伝わっており、書誌学及び工芸史の研究上注目されます。
〔鎌倉後期~室町〕 東寺旧蔵
現在の京都市西京区にあった東寺領荘園である上桂(上野)庄及びその周辺を描いた新出の差図で、東寺百合文書中に関連する文書が存在することから、この文書ももとは東寺に伝わり、橋本経亮が近世期に譲り受けたものと推定されます。鎌倉期における桂川の河道の変遷に関する記載があり、中世日本の荘園史研究上重要な差図と考えられます。なお香果遺珍中には東寺旧蔵の上野庄の差図が他に2点含まれており、いずれも新出資料です。
〔江戸後期〕
甲羅に吉祥文を持つ負文亀の濃彩画。天明の大火による焼亡を経て、復古的造営がなされた寛政度内裏では、紫宸殿での天皇の御座所の背後に立てられる賢聖障子も図様がさまざまに改められました。幕府儒官の柴野栗山らの考証に基づき、絵師住吉広行が寛政4年(1792)に完成させたものは、中央上部にそれまでの蓬莱図に替えてこの負文亀が描かれています。本図は現存する寛政度内裏の賢聖障子とも概ね図様が一致することから、広行による腹案ないし下書きであった可能性があります。旧蔵者の橋本経亮は朝廷に出仕する非蔵人でしたから、そうした縁で入手したものかと推察されます。
〔享和元年(1801)~文化初年頃〕写
近世後期の京の国学者である橋本経亮(1759~1805)の主著といえる考証随筆『橘窓自語』正続の自筆稿本です。著者の見聞したさまざまな資料や人物に関する逸話、有職故実に関する考証など内容は多岐にわたります。『鼠璞十種』や『日本随筆大成』に活字化されているものはすべて転写本に基づいたものですが、今回新たに発見された著者自筆本には伴蒿蹊筆の評語や、従来知られていなかった記述なども認められ、資料的価値が高いものといえます。
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