会期:2018年10月3日(水)~10月9日(火) (終了しました)
会場:丸善・丸の内本店4階ギャラリー(入場無料)
時間:9:00~21:00 最終日16:00閉場
主催:慶應義塾図書館
協賛:丸善雄松堂株式会社
活字による15世紀の西洋初期印刷本をインキュナブラと呼びます。
様々な変化と工夫を経て、現代の本のルーツとなりました。
なぜ「印刷革命」と呼ばれ、今に至る影響力があるのでしょうか 。
当時の技術の粋を尽くした活版印刷本の美と、そこから広がる疑問と謎解きの世界をお楽しみください。
10月5日(金) 18時~
10月8日(月・祝) 14時~
慶應義塾大学文学部准教授 安形 麻理
★ギャラリートークを動画でご覧いただけます(2018年10月5日 約47分)
「インキュナブラの時代」ギャラリートーク
10月6日(土)14時~
「インキュナブラの装飾と挿絵」 慶應義塾大学理工学部専任講師 池田 真弓
10月7日(日)14時~
「ダンテ『神曲』の数的宇宙」 慶應義塾大学文学部教授 藤谷 道夫
「グーテンベルク聖書」は、活版印刷術による西洋最初の本格的な書物であり、「印刷革命」の端緒を開いた。標題紙や刊記はなく、印刷者の名前や印刷地は一切記されていないが、用紙や活字などの綿密な研究から、また断片的な裁判記録などの周辺資料から、マインツの金細工師ヨハン・グーテンベルクがヨハン・フストの経済的支援を受け、1455 年頃に完成させたと考えられている。黒インク以外の装飾頭文字や欄外標題、章番号などは印刷後に手書きで挿入された。写本のページレイアウトを踏襲しつつも、厳密な植字の規則を定め、いっそうの精緻化が図られている。近年、グーテンベルクの活字鋳造方法をめぐり、定説のように金属製ではなく、一度しか使えない母型が使われたのではないかという新説が提唱され、注目されている。
グーテンベルクの活字を使い別人が印刷した「36行聖書」や、印刷方法が論争の的となった『カトリコン』と合わせて展示する。
展示番号9(初版)
展示番号10(第2版)
英国初の印刷所を開いたのは、イングランドの毛織物商人としてブルゴーニュ公国との交易や外交に携わり、ドイツのケルンで印刷術を学んだウィリアム・キャクストンだった。英国における大作の印刷第1号は当時の人気文学作品『カンタベリー物語』初版であり、およそ6年後には第2版が刊行された。現代と違い、解版されて版は残っていないので、新たに活字を組み直すことになる。本文も部分的に修正されている。挿絵や欄外標題を入れるなどのレイアウトの大幅な変更は、新たな読者の獲得を目指すキャクストンの販売戦略をうかがわせる。第2版の現存数は少なく、初版と第2版を並べて見ることができるのは、国内の研究機関としては初の機会となる。
版画は、手書きの挿絵に比べ、正確に、安価に、そして大量に同じ図像を複製することができる。活字も木版画も凸版であるため、同時に印刷でき効率もよかった。本書はエウクレイデス(ユークリッド)の『幾何学原論』を初めて印刷したもので、余白には多くの図形や線分が印刷され、ロトゥンダ体活字とアラビア数字による本文とよく調和している。読者による書き込みは、実用的に使われた様子を伝えている。余白の図版は、木版画とする説と金属鋳型を用いたとする説の両方がある。
複雑な音楽理論の図示や写実的な医学の図版など、科学の書における図版の力を伝える書物と並べて展示する。
写本が注文生産を基本としていたのに対し、印刷本は見込みで生産され、在庫となる。インキュナブラ時代に、販売までの一時的な識別のため標題紙が登場し、やがて購買意欲をそそる版画や宣伝を添えた標題紙へと発展していく。本書の標題紙には、印刷業者の大きな商標の下に標題や店の住所などが示されている。時禱書とは平信徒向けの祈禱文集で、14,5世紀には手書きの細密画が施された写本が数多く制作された。本書の本文の周囲は数多くの版画で埋め尽くされており、写本の挿絵に、量で対抗し差別化を図ろうとした様子がわかる。
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