ラテン語の「本(liber)」とは、もともとは樹木の内皮を表す言葉でした。本といえば「紙に印刷されたもの」を考えがちですが、紙や印刷技術が発明される以前から、動物の骨や粘土、水草パピルス、ヤシの葉、羊や子牛の革をつかった羊皮紙など、様々なものに文字が刻まれていました。その後、時代が経つにつれ木や金属で作られた活字が誕生し、活字による印刷技術の発明で書籍の大量生産が可能となりました。
今回の展示では、「紙」以前のさまざまな形態の資料から出発し、慶應義塾図書館の貴重書を通じて古今東西にいたるまでの「本」の歴史を辿ります。
前期展示では、甲骨文字や死者の書に代表される古代博物資料から、和書・漢籍を中心として、和書は8世紀の百万塔陀羅尼から江戸時代までの絵巻、版本や、漢籍は四庫全書や朝鮮木活字、あわせて18世紀後半に製作のヘブル語聖書トーラー写本も展示します。
後期展示では、洋書を中心として、慶應義塾大学文学部と言語文化研究所の先生方による、パピルス書簡など博物資料から西洋中世写本、初期印刷本(インキュナブラ)に至るまでの選りすぐりの貴重書を一堂に展示します。
Outlive Humanity ― 古代から引き継がれ、そして人類が滅びても、なお未来に残されてゆくであろう「本」たちが旅した長い歴史を、2ヶ月の展示を通じて感じていただければ幸いです。
主な展示資料:
・死者の書(紀元前600年頃)【前期】
・パピルス書簡【前期、後期】
・ローマ帝国軍人の退役証明書(160年ごろ)【後期】
・百万塔陀羅尼(770年)【前期】
・小敦盛 [室町末期] 絵巻 【前期】
・源氏物語抄出 特小奈良絵本 【前期】
・嵯峨本観世流謡本『俊寛』本阿弥光悦【前期】
・欽定四庫全書 経部 『周易函書別集』 【前期】
・『大藏一覽集』10巻目1巻 駿河版〔慶長20年(1615)〕刊 【前期】
・朝鮮古活字 (朝鮮李朝期)【前期】
・グーテンベルク聖書零葉 【前期】
・Plantin Press 鋳造活字【前期】
・ブリテン王の系譜 (1461-71) 【前期】
・キケロ『善と悪の究極について』(フィレンツェ、 1450‒60 年頃) 羊皮紙 【後期】
・イシドール 『語源論』【後期】
・ユスティヌス 『ポンペイウス・トログスのピリッポス史抄』【後期】
・アリストテレス 『著作集(ギリシャ語)』【後期】
ほか
2025年4月21日(月)~ 6月28日(土)
前期:4月21日(月)~ 5月20日(火) 後期:5月26日(月)~ 6月28日(土)
平日 9:00-18:20
土曜 9:00-16:50
休室日:日曜・祝日(除:4/29)、4/23、5/21~5/25
※一般の方もご見学いただけます(入場無料)
慶應義塾図書館 1階展示室 [三田] 交通アクセス
東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学キャンパス内
三田メディアセンター展示委員会
小池和子(言語文化研究所教授)
近藤智彦(文学部教授)
小林薫(文学部准教授)
長谷川敬(文学部准教授)
言語文化研究所